北海道大雪山白土とは

北海道の屋根とも称される大雪山(たいせつざん)は、約120万年前から続く火山活動により豊かな地層と鉱物資源を生み出してきました。そこで堆積した火山灰質の土壌が長い年月をかけて風化・変化し、白土(しらつち)と呼ばれる自然素材となります。この白土は、一般的な「粘土」とは異なり、硅酸塩鉱物を豊富に含みながらも粒子がきめ細かく、吸水性や調湿性に優れるという特性があります。加えて、大雪山特有の地質環境により、淡くやわらかな白色系の発色が得られることが大きな特徴です。

白土の「色彩調整材」としての特性

壁材や内装仕上げ材において、「白」は単なるベース色ではなく、「空間全体の印象を左右する“光の設計色”」です。大雪山産の白土は、その柔らかい白みとともに、機能的・美的価値を持ちます。

色の濁りが少なく、自然なトーンに調整できる

白土は無機鉱物由来の天然の白色顔料とも言えます。化学顔料のようなぎらつきがなく、他の土色(赤土・黒土・黄土)や鉱物系顔料と混ぜたときに“にごり”が出にくいため、繊細な色設計が可能です。

発色の安定性と経年変化への強さ

合成顔料や有機顔料に比べて、白土は紫外線や湿度変化に強く、色あせや黄変が起こりにくいのが特長です。年月を経るごとに味わいを深めながらも、基調の白は濁らず、空間の清浄感を保ちます。

マットで柔らかな光反射率

白土は光を反射しすぎず、吸収しすぎず、空間にやわらかい明るさをもたらします。特に自然光や間接照明との相性がよく、光を和らげて拡散する効果があり、目にも肌にも優しい空間づくりに貢献します。

大雪山は、アイヌ語で「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」とも呼ばれる聖地。その火山灰からできた白土を壁材に用いることは、空間に北海道の“息吹”や“祈り”を宿すようなものです。地産の自然素材を使うことは、サステナブルな視点からも大きな意義を持ちます。また、白土は、古くは日本各地で土壁や漆喰の調整材として用いられてきました。大雪山白土は、近代建築と伝統建材の“橋渡し役”となる存在でもあります。和にも洋にも馴染み、現代的な空間デザインの中で自然素材の質感を引き出します。

「白」という色は、混じりけのない明るさと、静かな品格を持つ色です。しかし、工業製品の白には、時として“冷たさ”や“無機質さ”が宿ります。一方、大雪山の白土は、人の心に寄り添うような、あたたかく、静かな白。それは、大地の記憶を纏った白であり、時間を重ねた素材だけが醸し出す「奥行きある白」です。色彩を調整する素材でありながら、空間そのものの存在感を底支えする、そんな名脇役として、大雪山の白土はこれからの建築空間に新しい美の基準をもたらしてくれるでしょう。

TOP